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中小企業が銀行借入金から脱出するためのキーワード

中小企業が銀行借入金から脱出する方法にはどんな方法があるのしょうか?今からその一つ一つについて説明していきます。


1.基本原則

売上を最大限に伸ばし、経費を最小限に抑える

「売上を最大限に伸ばし、経費を最小限に抑える」。うーん!なーんだ「そんなこと当たり前だろ!」と言われそうですが、これは私の尊敬する京セラの稲盛和夫先生の【経営の原点12カ条】の中の第5条に出てくる言葉です。稲盛先生は次のように言っています。【経営とは非常にシンプルなもので、その基本は「いかにして売上を大きくし、いかにして使う経費を小さくするか」ということに尽きる。利益率は、業種によっておおよそ決まっているという先入感や常識にとらわれてはならない。売上を最大にするためには、営業努力を重ねる、この一点に尽きる。一方「経費を最少に」する方法は、やり方次第で利益に大きな差が生じる。ここに経営の要がある】と。つまり、売上を伸ばすには経費はこれぐらいかかるのだという常識にとらわれるな!ということです。売上を伸ばしても経費を増やさないよう知恵を絞れということです。例えば、「新規投資の場合でも、所有するのではなく借りる」とか「一人従業員が抜けた場合でも、新たに従業員を増やさなくてもやれる方法はないか」とか「経費カットの苦しみを得たのだから、景気が良くなっても今度は簡単に経費を増やさないぞ」とか。常に知恵を絞れということです。ただし、社長が現場の電気を消して回るようなマネはしてはいけないとも言っています。数値という理詰めでいく、例えば経費を細分化して捉える。経費項目を細分化(まずは、部門別、次に現場別)することで、誰の部門のどこの経費かが手に取るようにわかるくらいにする。そしてその成果を皆に明瞭にすることが大切であると言っています(アメーバ経営管理システム)。如何でしょうか?これが銀行借入金から脱出する基本原則です。

役員報酬手取額の1/4は貯金し、時期を捉えて自分の会社に投資する

皆さん本多静六先生はご存じですか?本多先生は1866年に生まれ、苦学して東京帝国大学教授となり、25歳で人生計画を立て、貧しい学者生活の中から資産形成に励み、40歳にして百億円余りの資産を築くも思うところあって60歳でそのほとんどを寄付した伝説の人。明治神宮、日比谷公園をつくり、国立公園の生みの親といわれ、渋沢栄一、安田善次郎、諸井恒平ら当時のトップ実業家の顧問として活躍した方です。本多先生は、「本多式1/4貯金法」を推奨しています。その著書の一節を紹介します。【本田式1/4貯金法は、決して本多の発明ではない。既に2500年も昔にお釈迦様が御経の中でも説いておいでた。江戸時代でも松平楽翁公や二宮尊徳翁、その他幾多の先輩が奨励してきた貯金法(分度法)と一致している。ただ、その実行を偶然私が思いついたまでである。貯金の問題は、要するに、方法の如何ではなく、実行の如何である。ホンの一回、最初の出発において、何人もまず4分の1の生活切り下げを断行して下さい。ただ、それだけで済むのである。何事も中途でやり直すことは難しい。最初から決めてかかるのが一番楽で、一番効果的である。(人生と財産:私の財産告白(日本経営合理化協会出版局)】と。一度生活レベルを上げてしまったら、自らは二度と落とせないことを人間の業として理解しているのですね。
次に投資です。【投資に必ず勝利を収めようと思う人は、いつも静かに景気の循環を洞察して、好景気には勤倹貯蓄を、不景気の時代には思い切った投資を、時機を逸せず巧みに繰り返すよう私はお勧めする】と。時期を捉えて貯めたお金を投資する。
世の中に絶対儲かる投資なんてありません!しかし、その中で一番確率が高いのが自分の会社だと思うのですが、如何でしょうか?増資や私募債で会社にお金を注入してください。そして強い財務体質を基盤とした自己資金経営に取り組んで欲しいものです。自己資金経営の最大のメリットは、中小企業においても、優秀な人材の確保・育成を実行する余裕が持てること、そして思い切った設備投資ができることであると思うのですが、如何でしょう。

この基本原則は心構えとして大切ですが、自社株評価が高くなるデメリットがある

基本原則を守って、毎年着実に利益を上げ、内部留保に励んでこられた会社は、利益剰余金が膨らみ、財務状態が非常に良くなります。会社としては健全な姿なのですが、皮肉な皮肉なことに、相続や経営承継の場面では、それが大変な重荷になってきます。
 それらについては、別の項目で対応策をご説明していきますのでご安心ください。

2.会社内の資産や人間関係のしがらみを整理する

銀行借入金から脱出する第一ステップは会社内資産や人間関係の見直しです。会社の資産の中には、社長として儲けるために企画し、実行したが、今は業績に貢献するどころか、逆に足を引っ張っているようなものもあります。
例えば、

1.投機狙いで購入したが寝かせっぱなしの土地・建物
2.創業時の思い入れのある工場や機械、設備
3.友人の会社の株だが、紙くず同然の有価証券
4.10分の1以下の価値しかないゴルフ会員権やリゾート会員権
5.いつまでも援助しなければならない子会社への貸付金
6.個人的に使ってしまった社長への貸付金
7.返済のあてのない親族・友人への貸付金


資産価値が下がった資産や返済を期待できない貸付金を整理処分する。これらの整理処分を通じて含み損や放棄損(要件が満たされないと寄付金課税の対象となり損金と認められない場合もあります)が実現することにより、お金が出ていかない損金を計上できることになります。その損金で法人税等の税負担が免除され、銀行借入金の返済への充当が可能となります。
 また会社内資産だけではなく、永年の人間関係のしがらみも、会社の将来のために経営者に整理していただきたいものです。場合によっては恨みを買うなど、難しい面がありますが、時間をかけて取り組んでいただきたいものです。
例えば、

8.役員や社員として名前は登録されているが、さまざまな事情により勤務実態のない人に役員報酬や給料を支払っている
9.仕入先、下請け先、金融機関など自社の経営活動と直接関係する外部との関係においても、社長の親族だからとか、昔大変世話になったとかの理由だけで、高コストの取引を余儀なくされている


3.役員退職慰労金は死亡時ではなく、生前退職時に受け取る

第2ステップが、銀行借入金から脱出する方法のうち、経営承継期にしか使えませんが、一番実現性が高いスキームです。今まで役員退職慰労金というと社長が死亡した時に取るものという考えが、主流でした。しかし、今後は「生前役員退職慰労金を取る」という方向に大きく変化していくことでしょう!銀行借入金からの脱出もそうですが、自社株が高額になっている会社は、社長の経営者人生の精算としての自社株株価の引き下げ効果、経営承継を円滑に進めるための様々な効果があるからです。以下基本的なスキームをご紹介します。

なぜ銀行借入金の返済は難しいのでしょうか?

 それは、元金の返済があるからです。利息は経費になりますが、元金の返済はもちろん経費になりません。借りたものは返す、これ当たり前の事です。しかしこれが大変なのです。
 例えば、1億円を5年返済で借りました。1年間の返済額は2000万円です。5年の短期借入金は、在庫増や売掛金増のための運転資金のための借り入れです。当然運転資金のための借入れですから、減価償却費はありません。だから、利益で返済します。当然利益が出れば法人税等の負担があります。利益には約40%の法人税等がかかります。
 そのためには3333万円(2000万円÷60%)の利益が必要です。3333万円の利益の出る会社はあまり多くはありません。だから、銀行借入金の返済は難しいのです。

役員退職慰労金を1億円支払いました。所得税等だけを支払い残りは再度会社へ時価発行増資か少人数私募債で出資しました。

 先ず収支計算です。これを行う事によって、会社から出たお金は所得税等だけです。役員退職慰労金の差し引き手取額は一度支払いましたが、再度会社へ出資しました。
 今度は損益計算です。役員退職慰労金を1億円支払いましたので、1億円が会社の経費になりました。1億円がその事業年度で控除しきれない場合には繰越欠損金になります。
 繰越欠損金は7年間で控除する事ができます。代表取締役社長から相談役に役員報酬は10万円になりました。専務は会社を辞めたため役員報酬はなくなりました。その減少した経費だけ繰越欠損金を控除できます。
 繰越欠損金を控除している時は、例え会社に利益が出ても法人税等の負担がありません。だから、利益は全額借金の返済のために使えます。ほとんどの会社が、銀行借入金は最初の5年間ぐらいが返済できれば、ほぼ全額返済することができます。
  ある人が、これは国が行っている雇用助成金等の支援と同様、国と地方からの補助金を自分で作り、自分で使うようなものだと言っていました。まさにその通りだと思います。
  ほとんどの会社が役員退職慰労金を支払いたくても会社にお金がありません。でも大丈夫です。所得税等に対するお金さえあれば役員退職慰労金を支払うことができます。そして、銀行借入金から脱出することができます。

法人税法上、生前役員退職慰労金については、不相当に高額でなければ会社の損金に算入できます。

 ただし、退職が事実でなければなりません。退職したはずなのに、今までと変わらず最前線で経営の指揮を執っていれば税務調査で否認されてしまいます。顧問や相談役の名目で後継者等から求められ助言する程度の事は、どこの会社でもしている事ですから問題ないと思います。

1.役員退職慰労金の支給額の計算
 役員退職慰労金の金額をいくらにするかは、その会社の合理的な判断に任されています。一般的には以下の通りですが参考程度に捉えてください。自社独自の根拠が大切なのです。

算式: 役員退職慰労金 = 退職時役員報酬月額 × 役員在任年数 × 功績倍率

 例えば、退職時の役員報酬月額が120万円で、役員在任年数が30年あり、検討の結果、会社への功績倍率が3倍となれば、1億800万円となります。

時価発行増資について

 増資について考えてみましょう。多くの中小企業は、増資なんてしません。300万円の資本金で始まり、10年経っても20年経っても300万円のままです。それに、利益が出ません、というか出しません。しかし、売上が増え、規模が大きくなれば、在庫は増えるし、売掛金も増えます。それに設備投資も必要になります。だから増えるのは借金だけです。その借金の返済期間が5年の短期借入金ならば、返済は実質23%です。これでは毒を薄めて飲んでいるのと同じです。
 増資を提案するコンサルタントが少ないのも増資が普及しない理由の一つのような気がします。しかし、私は増資ほど資金繰りにとって効果的なものはないと思います。なぜならば、増資で得たお金は銀行借入金のように元金の返済もありませんし、支払利息もありません、まさに魔法の玉手箱です。

ある事例

 次に最近依頼された「個人と会社の総合診断」の事例を紹介します。
 自社株の評価は、類似業種比準価額が30万円で純資産価額が70万円です。多くの会社が、純資産価額よりも類似業種比準価額の方が小さくなります。ここ数年の証券市場の冷え込みが関係しています。また、自社株対策をすれば、類似業種比準価額を低くする事は比較的簡単です。例えば、役員退職慰労金を支払う事によって類似業種比準価額を低くすることができます。
 時価発行増資をします。その時には純資産価額を採用します。1株70万円で発行株数は250株です。金額は1億7500万円です。同族会社の時価発行増資の時価で行うと決められています。そして、その時価は相続税評価額を使うと決められています。そして、その相続税評価額は、類似業種比準価額と純資産価額の併用方式か、純資産価額との選択適用が認められています。今回は純資産価額を採用しました。
 会社法により、株式の発行価額の総額の1/2以上を資本金に組み入れると決まっているので、この場合の資本金の増加額は、8750万円としました。もともと資本金1000万円でしたので、増資後の資本金は9750万円です。まだ、1億円にはなりません。資本金の金額により、法人税法上中小企業の特例が設けられています。例えば、法人税の軽減税率とか、交際費の損金不算入とか、地方税の外形標準課税の免除とかです。ここは例え増資をしても、資本金は1億円を超えるべきではないと考えました。
 会社は豊かになることが大切です。そのお金1億7500万円で、新規事業を自己資金で行うことができます。1億7500万円で銀行借入金を返済することができます。
 しかし、問題は相続です。1億7500万円の増資資金はいくらで評価されるのでしょうか?個人がお金で持っている場合、100%評価、そうそのままの金額になります。ですから、1億7500万円が評価額です。もしそれが自社株になった場合、その自社株の評価は、類似業種比準価額と純資産価額の併用方式を採用します。この会社は「中会社の大」です。相続税法の規定により類似業種比準価額を90%採用するので、評価は30万円×90%+70万円×10%=34万円です。34万円×250株は8500万円です。相続時に事業承継税制を利用すれば、80%が納税猶予されます。8500万円の20%の1700万円だけが相続税の課税価格に算入されます。1700万円が相続税だと言っているのではないのです。1700万円は相続税の課税価格です。1億7500万円増資をしても、相続税の課税価格は1700万円です。
 これだったら、相続税の心配はほとんどありません。そんな投資今の日本にありますか?財産はあるのに相続税は少なくなります。
1億7500万円のお金が、会社に入れば、絶対というつもりはありませんが、相当ひどい経営をしない限り、間違いなく繁栄します。だって、増資ですから、借金のように元金の返済も利息の支払いもありません。

少人数私募債について

 少人数私募債は、会社法の改正により、株式会社だけでなく有限会社等も発行可能になりました。私は20年前から使っています。実に便利なものです。少人数私募債の購入者は50名未満と決まっています。
私は、募集の対象者は、社長及びその親族に限ると思っています。第三者はダメです。なぜならば、社債を償還する時、償還原資の調達に苦労するからです。償還の原資がないものは発行するべきではないと思います。しかし、償還の原資がないから社債を発行するのです。社長及び親族は、償還できなくても我慢しなければなりません。しかし、第三者は無理だと思います。時々、少人数私募債を発行後倒産する会社がありますが、これは詐欺です。
 また、少人数私募債は、官庁などへ届け出は必要ありません。書類を作り、会社に保管しておけばそれでOKです。また、少人数私募債は、1社1億円未満までと決まっています。業績のいい人は、2社、3社と会社を設立している人がいますが、その場合には2億円、3億円と発行することができます。
 私は、社債利息を7%取ることを提案しています。よく、この事で質問をされる事があります。法律で何%までだったらいいとかダメとかどこにも書いてありません。妥当であったらいいのです。勿論節税のために%を決めていたらアウトだと思います。5%だったら良くて7%はダメなんてことはありません。あくまでも妥当な金額です。
 9000万円の社債利息を取ります。社債利息の支払いは多くの会社が年に1回です。社債利息が7%の場合、630万円です。決算期に合わせて取ったらいいと思います。社債利息の源泉税は20%の126万円です。社債利息を取った翌月の10日までに、国に、つまり税務署に15%、県に、つまり県税事務所に5%を納付します。これだけです。勿論源泉分離課税ですので、確定申告は不要です。
 さて、償還についてはどうでしょうか?事前に決めます。私は当初5年償還にしました。しかし、5年経ったら再発行です。だってこんな有利なもの償還したくありません。今は、最初から10年にしています。
 だから社債は借金ですが、社長と親族だけが対象の発行ですから、実質は資本に近い位置にあるのです。

4.個人で資金作りを行い、会社に出資ないし貸し付ける

最終ステップです!次は経営者や親族の個人資産の見直しを行います。次のような事例がありました。

 Aさんは会社を経営しています。積極的な投資をしましたが、どうもうまくいきません。今では会社の累積赤字は8000万円にまで増えています。会社の銀行借入金も1億円にまで膨らんでいます。銀行も返済を強く迫っていました。Aさんの父親は80歳、地域で有名な大地主、相続税評価で10億円ほどの資産があります。子供はAさんを含めて3人、配偶者は先に死亡しています。このまま相続ともなれば、相続税負担は3億1900万円にもなりそうです。そこで次のような提案を行いました。

 父親所有の土地500坪を1億2000万円(相続税評価は1億円)で売却し、20%の所得税等を差し引いた1億円をAさんの会社に貸付ます。A社はそのお金で銀行借入金を一括返済。会社は2年後に貸したお金1億円を父親から債務免除して貰いました。会社はその債務免除益で会社の繰越欠損金と相殺します。晴れて無借金会社となりました。Aさんはこれまでの失敗を教訓に、この間に投資した資産を生かすことができる事業を見つけていました。その後、父親の財産は9億円に減少し、相続税は2億7700万円になっていました。土地を売る前の相続税より4200万円減少したことになります。如何でしょうか?子供の失敗を親が肩代わりしたような事例ですが、現在の日本の経済環境ではどこかで決断しなければならないような事例ですね。

個人で資金作りを行い、会社に出資や貸付することもケースバイケースで検討しましょう!


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